『宝物集』に見る持戒について
『宝物集』という文献は、平安時代末期の平康頼によって書かれた仏教典籍であるが、非常に独特な内容であり、しかも、その後にも多くの影響を与えたと思われるのである。本書には阿弥陀仏のおわします極楽浄土に往生するための、「十二門」が立てられている。そして、その中に「第三戒をたもち仏になるべし」という一門では、冒頭に以下のように戒を護持する功徳を説く。如来の禁戒の城にいりぬれば、見思・塵沙・三毒・五蓋・十使・九十八煩悩・八万四千の悪業のいくさ、若干の勢をおこしてせめ来るといへども、またくおとさるゝ事なし。このゆへに、梵網経は、「持戒の人は、浄土人天の報をうく」といへり。岩波新古典文学大系『宝物集(他)』193頁それで、ここで引用されている『梵網経』だが、現行よく知られている文献からではよく分からない。どうも、同じ文脈は無...『宝物集』に見る持戒について